静岡県富士宮市にある世界文化遺産のひとつ、人穴富士講遺跡(ひとあなふじこういせき)。地元民の間では心霊スポットとして知られていた場所ですが、富士山の構成資産として2013年に世界文化遺産へ登録。それに伴い駐車場などが整備され、現在では富士宮市を代表する観光スポットとなりました。
現在ではパワースポットとしても認知されているこの場所。しかし、心霊スポットだった名残から、今でもその不気味な雰囲気は変わらないとの噂も……。心霊スポットなのか?パワースポットなのか? それは実際にこの場を訪れればわかること! 人穴富士講遺跡へお出かけの際は、ぜひ明るいうちに。
人穴富士講遺跡ってどんなところ?
人穴富士講遺跡は、静岡県富士宮市人穴という場所にある富士講(富士山信仰を行うための講社)に関わる史跡群。富士山の噴火でできた溶岩洞穴「人穴」や人穴を管理するための神社「人穴浅間神社」もこれに含まれます。
2013年、富士山が世界文化遺産に登録。それと同時に富士山域、静岡県域、山梨県域にある25の資産が世界文化遺産に登録され、人穴富士講遺跡もそのひとつとして世界文化遺産に登録されることとなりました。これにより駐車場などが整備され、富士宮市を代表する観光スポットへと変貌を遂げましたが、それ以前は地元では有名な心霊スポットだったんです。
静岡生まれ静岡育ちである私も以前は、「人穴=心霊スポット」というイメージを強く持っていましたが、世界文化遺産に登録されたことがこの遺跡についてより深く知るきっかけとなりました。知ることでただの心霊スポットというイメージは完全に払拭され、この場所を訪れるに至ったというわけです。不気味な雰囲気漂う心霊スポットと知っていてわざわざ足を運びたくはないですもんね……。
心霊スポットとして有名だった場所が世界文化遺産に登録され、パワースポットと呼ばれるようになると人は見方が変わるもので、今まで怖いと思っていたものが神聖なものに見えたり、不気味だと思っていた場所が何か特別な場所のように思えたりするんです。イメージって怖いですね。
人穴富士講遺跡がどんな場所か知ることで、心霊スポットと呼ばれていた理由や怖い場所というイメージがついてしまった経緯なども明らかになると思います。お出かけ前に、この遺跡がどんな場所なのか知っておきましょう!
人穴富士講遺跡はどこにある?

人穴富士講遺跡は、静岡県富士宮市の「人穴」という地名の場所にある文化遺産です。富士宮市の観光スポットが集まる朝霧高原エリアに位置しますが、朝霧高原を南北に貫く国道139号からは東へ少し入った場所にあります。
木々が生い茂りとても自然豊かな場所ですが、その反面、民家が建ち並ぶような場所でもなく、交通量が多い道路沿いというわけでもないため、少し物寂しさを感じるような場所でもあります。
事前に少しだけこの場所のことを調べてから訪れましたが、やはり頭の片隅には“心霊スポット”というイメージが残っていたようで、この物寂し気な雰囲気と相まってどうしても不気味な場所に思えてなりませんでした。
きれいに整備された駐車場


人穴富士講遺跡の駐車場は、この場所が世界文化遺産に登録されたことに伴い整備されました。道路に面したわりと広めの駐車場で、駐車区画は10台分ほど。広さだけ見たらもっと駐車できそうなスペースがありました。
私がこの場所を訪れたのが平日だったこともあり、駐車場には車が一台も駐まっていませんでした。遺跡を見学している間に1台だけ車が入って来るのを見かけたのですが、どうやらトイレを利用するために立ち寄っただけだったようです。もしかしたら周辺を訪れた方のトイレ休憩の場としても利用されているのかもしれませんね。
人穴富士講遺跡には何がある?
ちょっと不気味?な鳥居がお出迎え

駐車場に車を駐めたら、いよいよ遺跡見学スタートです! 駐車場のすぐ隣にあるのが人穴浅間神社一の鳥居。人穴富士講遺跡への入口となる鳥居です。
心霊スポットとして有名だった頃は、「鳥居を車でくぐると無事に帰れなくなる」「鳥居は入る時にはくぐらない、出る時にはくぐるようにしないと災いが起こる」なんて噂があったりもしましたが、ご覧の通り、現在は車で鳥居をくぐることはできなくなっています。
実は私も若い頃一度だけこの場所まで来たことがあったのですが、訪れたのが夜だったのとその噂を聞いたことがあったというだけでものすごく怖い場所に見え、鳥居前を通過して帰ったことがあります。イメージや思い込みでものの見え方って変わるものですね。とは言え、現在の鳥居もなかなか不気味に見えなくもなかったり……。
人穴について記された石碑「人穴浄土門の碑」

鳥居をくぐりまっすぐ進んでいくと「人穴浄土門の碑」というものがあります。こちらは人穴の由来や人穴を開山した長谷川角行(はせがわかくぎょう)という人物について書かれた石碑です。残念ながら石碑に書かれた文字を直接読むことはできませんが、その内容を要約してくれてあるので人穴という場所について理解することはできます。
そもそも人穴というものが何なのかというお話になりますが……。富士山とその神様への信仰を行うための講社を「富士講」と呼び、その開祖といわれている長谷川角行が修行の場として選んだ洞穴が人穴だったとされています。また、長谷川角行や富士講の人々にとっては入寂(にゅうじゃく)の地、つまり生涯を閉じる場所でもあったようです。
案内所は土・日・祝日のみ開館


人穴富士講遺跡には案内所が設けられています。土・日・祝日の10時~15時のみ開館している案内所で、御朱印もいただけるとのこと。案内所にはトイレもあり、こちらはいつでも利用可能です。
開館時は富士山世界遺産ガイドによる案内を受けることができます。また、事前予約をすれば溶岩洞穴「人穴」にガイド付きで入洞することも可能! 溶岩洞穴「人穴」にはガイド付きでないと入洞できないため、土・日・祝日にお出かけをご予定されている方はぜひ事前予約をして、洞穴内を見学してみてくださいね!
詳しくは富士宮市ウェブサイト・人穴富士講遺跡案内(溶岩洞穴「人穴」入洞)予約受付へ!



案内所のすぐ近くには人穴浅間神社の鳥居についての説明や富士山について書かれた石碑、案内板などが建てられています。訪れた際は目を通してみてくださいね。
ここから少し雰囲気が変わる? 人穴浅間神社境内へ

案内所の隣には二つ目の鳥居が設置されています。つまりこちらが人穴浅間神社二の鳥居ということになりますね。この鳥居をくぐった先に社殿があるのですが、ここは、
“遺跡の中にある神社”であり、“神社の境内にある遺跡”でもあるちょっと不思議な場所。
そんな珍しいタイプのパワースポットということもあり、この鳥居をくぐる前と後では雰囲気が少々変わります。
もしかしたら心霊スポットと呼ばれていたのも、この場所に漂う独特の雰囲気が理由だったのかもしれませんね。この場所で感じる空気感を怖いものと感じるか神聖なものと感じるかは人それぞれだと思います。みなさんはどちらでしょうね?


鳥居をくぐるとしばらくは緩やかな上り階段が続きます。途中、いくつか石碑のようなものが目に留まりましたが、残念ながら何を書いてあるのか、何のために建てられたものなのかはわかりませんでした。

階段を上りきると参道の両側に無数の石碑、正面には社殿が見えてきます。一般的な神社境内で見られる光景とは少し違いますね……。

私がこの日訪れたのは人穴富士講遺跡ですが、目の前に社殿があるならばお詣りしないわけにはいきません! 人穴浅間神社は溶岩洞穴「人穴」を護るため、そして「人穴」をお祀りするために建てられた社殿です。神様への感謝、手を合わせる心を忘れてはいけません。しっかりとお詣りを済ませてから遺跡を見学させていただきましょう。
富士信仰修行の場・溶岩洞穴「人穴」

社殿のすぐ隣には、人穴富士講遺跡、人穴浅間神社始まりの洞穴・溶岩洞穴「人穴」があります。その昔、この洞穴の中で多くの富士講の人々が修行をし、入寂したとされている場所です。
溶岩洞穴という名前の通り、溶岩流により生成された天然洞穴で、最奥部までは約80~90mにも及ぶとされています。現在公開されているのは洞穴内の一部区間のようですが、さらにその奥にも洞穴が続いているという説もあるとか……。


先ほどもご紹介しましたが、現在はガイドなしでの入洞は禁止となっているため、普段は柵が設置され立ち入り禁止となっています。洞穴内の見学をご希望の方は富士宮市ウェブサイトの人穴富士講遺跡案内(溶岩洞穴「人穴」入洞)予約受付ページより詳細内容をご確認の上、事前予約をしてから人穴富士講遺跡を訪れてくださいね!
富士講信者が建立した233基の碑塔




私が人穴富士講遺跡を訪れて一番印象深かったのが、富士講信者により建立された碑塔233基からなる「碑塔群」です。このうち建立年代のわかるものは89基。18世紀末から19世紀前半に建立されたものが多く、最古のものは洞穴内に位置しています。
これだけの数の碑塔が所狭しと並べられている光景はなかなか見れるものではありません。森の中の一角にある碑塔群。この場所に漂う不思議な雰囲気と相まって、なにか神秘的なものを感じました!
一見、墓石のようにも見えるこちらの碑塔群ですが、そのほとんどが「墓碑供養碑」「祈願奉納碑」「顕彰記念碑」といった記念碑や供養碑。誰かのお墓ではないのでご安心?ください。

碑塔群周辺には立入注意と書かれたプレートがいくつか置かれています。碑塔群について書かれた案内板にも「石造物にふれないでください」との注意書きがありましたので、十分に注意して見学しましょう。碑塔群全体が立入禁止というわけではないようです。
展望台から富士山と碑塔群を一望?

碑塔群の裏手には展望台があります。なんとなく展望台と聞くと、高さのある場所から一面を見渡せるような場所を想像しますが、こちらの展望台は地面から数十センチの位置にある小さな展望台です。

展望台から見える景色はこんな感じです! うーん、どうなんでしょう……。展望台横にある案内板によると、碑塔群の向こう側に富士山を望める絶景スポットのように書かれていましたが……。実際は木が生い茂っていて向こう側が見えるような状態ではありませんでした。
もしかしたら時期が悪かったのかもしれませんね。時期によっては富士山と碑塔群を一望できる素敵な展望台になるのかもしれません! 人穴富士講遺跡を訪れた際はぜひ一度この場所に立ってみてくださいね!
人穴富士講遺跡を訪れてみて…
「人穴富士講遺跡=心霊スポット」というイメージをお持ちの方にこそ訪れてほしい場所です! 実際私はこの場所を訪れてイメージが180度変わりました。この場所についてしっかりとした知識があれば怖いというイメージもなくなりますし、それどころか神秘的で何か特別なパワーを感じるような気も……!
やはり噂とはあくまでも噂であり、不確定なものから作られたイメージに心を左右されてはいけないと改めて思いました。心霊スポットとして有名だった場所が世界文化遺産に登録されたことにより、注目のされ方が以前と大きく変わったのは事実です。しかし、この場所に漂う独特な雰囲気を“不気味”と感じる方もまだまだ多いようで、
心霊スポットでありながらパワースポットでもある
という認識に落ち着てしまっているような印象です。私個人としては特別なパワーを感じるような場所だと思っていますが、感じ方は人それぞれですからね……。
なぜ心霊スポットと呼ばれていたのか?
今回、人穴富士講遺跡を訪れたことにより、この場所が心霊スポットと呼ばれるようになった理由が少しだけわかったような気がします。
まずはこの遺跡の所在地である富士宮市「人穴」という地名。溶岩洞穴「人穴」がこの地名の由来となっているようですが、この場所についてなにも知らず「人穴」という響きだけ聞くとちょっと不気味な感じがしますもんね。
人穴という洞穴が富士講の人々にとって入寂の地であったことも心霊スポットと呼ばれる理由のひとつだと思います。入寂の地ということは洞穴内で人が亡くなっている。つまり洞穴内には亡くなられた方々の霊がたくさんいると考えたのかもしれませんね。
人穴という地名に入寂の地、そこに大量の石碑があればお墓と勘違いしてしまう方がいても不思議ではありません。これらが合わさることにより不気味な場所と認識されるようになり、「霊を見た」とか「超常現象が起きた」といったような噂も広がり、心霊スポットと呼ばれるようになったのだと推測されます。
実際は怖い場所ではないのにもったいない……。私は今その気持ちでいっぱいです。この場所についての正しい知識が広がり、この神秘的な遺跡の魅力がたくさんの方に伝わることを願います!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
こちらの記事が少しでも、皆様のお出かけ時間のお役に立てれば幸いです!
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人穴富士講遺跡へのアクセス
公式サイト
所在地
〒418-0102 静岡県富士宮市人穴206(人穴浅間神社も同じ)
公共交通機関をご利用の方へ
最寄り駅はJR身延線富士宮駅、最寄りのバス停は畜産試験場北入口(人穴富士講遺跡まで徒歩30分)です。歩けない距離ではないですが、周りには数件の民家や牧場しかない山の中を歩いて向かうことになりますので、できれば駅からタクシーで向かうことをおすすめします。
見学・拝観料
無料(ガイド付きの洞穴内見学も無料 ※要予約)
駐車場
無料(普通車 10台ほど 大型車 数台)
見学・参拝時間
年中無休(案内所は土・日・祝日の10時~15時のみ開館)
その他ご不明な点、詳しい情報は富士宮市ウェブサイト・人穴富士講遺跡ページにてご確認ください。また、こちらのブログ内でご紹介させていただいた内容は記事作成時点での情報です。必ず最新情報をお確かめの上お出かけください。