江戸城の石垣や伊豆各地の建築・土木を支えた伊豆石の採石場跡、松崎町の「室岩洞」。ここは、当時の職人たちによる手掘りの跡がそのまま残る、本物の地下空間を肌で感じられる貴重な歴史スポットです。
ほの暗い洞内に一歩足を踏み入れれば、そこはまるで暗闇の地下迷宮。映画の世界に入り込んだかのような冒険気分が湧き上がり、歴史のロマンに触れながら非日常のワクワク感を味わうことができます。
一般的な観光洞窟とは違う、当時の仕事場がそのまま残るリアルな空間だからこそ、その歴史の背景を知ってから足を踏み入れれば、目の前の景色一つひとつの見え方がガラリと変わり、より充実した時間を過ごせるはずです。
この記事では、室岩洞の歴史的な成り立ちから、見逃せない地下の見どころ、そして事前に確認しておくと安心なアクセスや駐車場情報まで、初めて訪れる方にも分かりやすくお届けします。
室岩洞ってどんなところ?

室岩洞は、静岡県賀茂郡松崎町にある、江戸時代から1954年(昭和29年)頃まで稼働していた伊豆石の採石場跡です。約2000平方メートルにも及ぶ広大な地下空間が広がっており、現在は当時の面影をそのまま残す見学施設として公開されています。
このスポットの魅力は、整備された遊歩道を歩きながら、かつての職人たちがノミなどを使って手掘りで削り出した岩肌や、当時の作業風景を間近で見学できる点にあります。洞内には一部照明が設置されているものの、薄暗く足元が不安定な場所もあるため、見学には十分な注意が必要です。その分、本物の地下迷宮を探索しているようなドキドキ感は高まりますので、リアルな探検気分を味わいたい方にとってはたまらないポイントです。
1982年(昭和57年)に整備されオープンした見学施設ですが、現在は伊豆半島の成り立ちを伝えるジオサイトの一つとしても親しまれており、約180メートルにわたる見学コースを20~30分ほどで巡ることができます。洞内は夏場でもひんやりとした空気に満ちており、天然の涼しさを感じながら、歴史のロマンに浸るひとときを過ごすことができる場所です。
室岩洞へのアクセスと駐車場情報

室岩洞は、西伊豆の美しい海岸線に沿って走る国道136号沿いに位置しています。豊かな自然に囲まれた少し見つけにくい隠れスポットのため、事前に場所や各アクセス方法を確認しておくと、当日の移動がとてもスムーズになります。
駐車場:道路を挟んだ向かい側の小さなスペース

国道136号を松崎から南伊豆方面へ進み、トンネルを抜けた先の左側に、普通車が4〜5台ほど停められる未舗装の無料駐車場があります。駐車スペースの目の前にはジオサイトの案内看板が立てられているため、こちらを目印にするのがおすすめです。
駐車場から室岩洞の入り口へ向かう際は、国道を横断する必要があります。ちょうどカーブの終わり際で見通しが悪い上に横断歩道等も設けられていないため、左右の安全をしっかり確かめ、車が来てないことを確認してから渡るようにしましょう。
公共交通機関:バス停からは徒歩約3分
電車とバスを利用する場合、最寄り駅は「伊豆急下田駅」、最寄りのバス停は「室岩洞」ですが、下田駅から室岩洞バス停への直通バスは運行されていないため、途中で乗り換えが必要となります。また、バスの本数が限られているので、事前に帰りの時刻表も確認しておきましょう。
- バスを利用する場合
伊豆急下田駅から東海バス(堂ヶ島行or宇久須行)に乗車、約50分で到着する「松崎」もしくは「松崎小学校」バス停で下車します。ここから雲見入谷行のバスに乗り換えて、約5分で「室岩洞」バス停に到着します。バス停から室岩洞までは徒歩3分ほどです。 - タクシーを利用する場合
時間を気にせず移動したい方や、乗り換えの手間を省きたい方は、駅からタクシーを利用する方法もあります。ただし、最寄り駅からでも車でおよそ40分と距離があるため、運賃が高額になってしまう点には注意が必要です。
現地移動:緑に囲まれた下り階段の遊歩道

国道沿いの入り口から洞窟までは、海岸の崖に沿って整備された遊歩道を歩いて下ります。時間としては1〜2分ほどですが、急な階段や未舗装の斜面、道幅が狭い箇所も含まれているため、履き慣れたスニーカーなどを選んでおくと安心です。
行きは下りですが、帰りは同じ道を上ることになります。自分のペースでゆっくり一歩ずつ進むことで、安全に緑豊かな景色を最後まで楽しむことができるでしょう。
室岩洞の見どころ

室岩洞は、伊豆半島が海底火山だった頃の火山灰が降り積もってできた「凝灰岩(ぎょうかいがん)」を切り出していた場所です。一歩中に入ると、外の景色からは想像もつかないほどのスケールを持った不思議な世界が広がっています。
ここからは、かつての石切り場の様子を今に伝える見逃せない見どころを紹介していきます。
地下迷宮のような広大な石切り場跡

洞内は約2000平方メートルもの広さを誇り、迷路のように複雑に入り組んだ内部構造になっています。現在公開されている見学用コースはおよそ180メートルあり、歩きながら石切跡や地層を観察できるよう整備されています。
少しひんやりとした空気が漂う中、薄暗い巨大な空間を歩いていると、まるで本当に未知の地下迷宮に迷い込んだかのようなドキドキ感に包まれます。天井は高い場所や低い場所が不規則に入り組み、時には屈まなければ通れないような通路も。奥行きのある空間には、一般的な天然洞窟とは異なる直線的な造形美があり、その迫力に思わず圧倒されてしまうほどです。
洞内は所々に照明が設置されているため完全な暗闇ではありませんが、実際は写真で見るよりも数段暗く、場所によっては手元のライトなしでは進むのを躊躇してしまうほど。おまけに、ここはコウモリの住処にもなっているため、洞内に響き渡る羽音や鳴き声が、迷宮探索をよりスリリングなものにしてくれています。
当時の仕事ぶりを伝える手掘りの採石跡

洞内の壁や天井をじっくり観察すると、職人たちがノミを使って手作業で石を切り出した跡が、無数に刻まれているのが分かります。中でも特に注目したいのが、壁面に均一な間隔で残された斜めの溝。これは作業に使われた道具の跡ではなく、雨水や地下水を集めて流し、採石作業をしやすくするために作られた「雨どい」とされています。暗く湿った採石空間の中でも安全に効率よく作業を進めるための、当時の職人たちの高度な知恵と熟練の技が今に伝わってきます。
規則正しく削り取られた岩肌を間近で見ていると、機械を使わずにこれほど広大な地下空間を切り拓いた人々のエネルギーに驚かされます。洞内には所々、当時の作業風景を再現したオブジェが立てられており、薄暗い光の中に浮かび上がるその姿は、今にも職人たちの息遣いやノミを打つ音が聞こえてきそうなほどリアルでした。
室岩洞にはこんな楽しみ方も

メインの地下迷宮をゆっくり歩いたあとは、洞内の片隅や、洞窟を抜けた先の景色にも少しだけ視線を向けてみてください。
たとえば、見学コースの途中にある、地下水が静かに溜まった水たまり。流れのない水は驚くほど澄み切っており、ライトに照らされた水底の手掘り跡までくっきりと見通せます。静寂の中に現れるその景色はどこか神秘的で、かつてここが人の手で切り拓かれた作業場だったことを一瞬忘れてしまうような、不思議な美しさに包まれています。

地下の探検を終えて、入口とは反対側の光の差し込む出口へと歩みを進めると、その先には心地よい海風が吹き抜ける展望所が待っています。ここからは、切り出した伊豆石を運び出していた「船積み湾」という入江を一望できるほか、晴れた日には青い海の向こうに富士山が顔を覗かせてくれることもあります。地下迷宮を抜けた先に広がる開放的な海の絶景もまた、この場所ならではの魅力の一つではないでしょうか。
室岩洞周辺の立ち寄りスポット
室岩洞の地下探検を楽しんだあとは、西伊豆の豊かな自然が生み出した美しい海岸美を巡ってみませんか。室岩洞からほど近い場所に、旅の余韻をさらに深めてくれる魅力的なスポットがあります。
弁天島(松崎町)
室岩洞から車で5分ほどの場所にある「弁天島」は、松崎海水浴場の北側にぽっかりと浮かぶ、緑に覆われた小さな島です。現在は陸続きになっており、歩いて島へ渡ることができます。
島には厳島神社が祀られており、石段を登った先にある社殿に手を合わせれば心がすっと落ち着くのを感じられます。また、島を1周する約200メートルの遊歩道も設けられており、西伊豆の絶景を静かに楽しみながら、ちょっとした冒険気分を味わうこともできます。
▼弁天島の詳しい情報については、別記事でご紹介していますのであわせてご覧ください。
堂ヶ島公園
室岩洞から車で北へ10分ほど進んだ場所にある「堂ヶ島公園」は、伊豆屈指の景勝地として知られる人気のスポットです。波の侵食によって削られた白い岩肌と、エメラルドグリーンの海が織りなすコントラストが、訪れる人の目を楽しませてくれます。
公園内には、国の天然記念物にも指定されている「天窓洞(てんそうどう)」があり、崩落した天井から光が差し込む神秘的な姿を上から見下ろすことができます。室岩洞で体感した伊豆の地質の面白さを、今度は明るい海岸線のアクティビティとして、のんびり歩きながら体感してみてはいかがでしょうか。
▼堂ヶ島公園の詳しい情報については、別記事でご紹介していますのであわせてご覧ください。
室岩洞はこんな方におすすめ!


室岩洞は、歴史や地質、探検要素など、どこに視点を置くかによって見え方が変わる奥深いスポットです。目的地を決める際の好みや旅のスタイルに合わせて、以下のような関心をお持ちであれば、現地での時間がより充実したものになります。
- 隠れた探検スポットや穴場スポットが好きな方
観光地化されすぎていない、かつての仕事場がそのまま残る本物の地下空間で、ワクワクするような非日常の時間を過ごすことができます。 - 静寂の中で非日常の空気感を味わいたい方
夏でもひんやりとした空気が漂う仄暗い洞内は、都会の喧騒から完全に切り離されており、静かに自分たちのペースで歩くのに最適です。 - 日本の近代化を支えた歴史や職人の技術に興味がある方
壁面に残る無数のノミ跡を間近に観察することで、機械のない時代に石を切り出した職人たちの息遣いや知恵を深く掘り下げられます。 - 伊豆半島の成り立ちや大地のドラマを感じたい方
海底火山の火山灰が積もってできた凝灰岩の美しさに触れ、地球の歴史と人間の営みの繋がりを体感できる貴重な機会になります。 - 西伊豆の自然や海岸美をめぐるドライブ旅を楽しみたい方
すぐ近くにある弁天島や堂ヶ島公園とセットで訪れることで、西伊豆の地質や海の魅力をストーリーとして繋げながら一日を満喫できるでしょう。
室岩洞を訪れる際の注意点


かつての職人たちの仕事場がそのまま残る採石場跡を安全に楽しむために、事前に知っておくと安心なポイントを整理しました。現地で慌てることなく、心ゆくまで洞窟探検を満喫できるよう、以下の点を確認しておきましょう。
- 足元に合わせた靴選びを忘れずに
国道沿いの入り口から洞内、そして抜けた先の展望所までは、急な階段や未舗装の遊歩道、不安定な砂利道などが含まれています。ヒールの高い靴やサンダルは避け、履き慣れたスニーカーなどを選んでおくと最後まで安心して見学を楽しめます。 - 1枚羽織れる上着があると快適
洞内は年間を通してほぼ一定に近い気温に保たれており、夏場はとても涼しく感じられる一方で、長く滞在すると肌寒さを感じることもあります。季節を問わず、簡単に着脱できる薄手の上着を1枚持参しておくと体温調節がしやすく便利です。 - 洞内の照明は8:30~17:00のみ点灯
洞内には自動照明が設置されていますが、点灯されるのは8:30~17:00の間のみです。点灯時間外は完全な暗闇となり、夕方以降や天候の悪い日は洞窟までの遊歩道も一気に暗くなります。足元の安全をしっかりと確保し、探検気分を存分に味わうためにも、照明が点いている明るい時間帯に見学しましょう。 - 手元のライトを用意しておくと安心
洞内の要所要所に照明が設置されていますが、場所によっては光が届きづらく、足元が見えにくいエリアもあります。スマートフォンのライトでも十分ですが、小さな懐中電灯などをひとつ持参しておくと、気になる場所を照らしながらより安全に探検を楽しめます。 - 事前のお手洗いがスムーズな観光の鍵
自然のままの姿を残した歴史遺構であるため、室岩洞の敷地内や駐車場にはお手洗いが完備されていません。途中で困ることのないよう、松崎の市街地や周辺の施設であらかじめ用を済ませてから向かうのが、時間を気にせず楽しむための秘訣です。
室岩洞の基本情報・アクセスまとめ
室岩洞の基本情報とアクセス方法をまとめました。お出かけ前にぜひチェックしてください。
公式サイト
所在地・Googleマップ
静岡県賀茂郡松崎町道部
公共アクセス
- バスを利用する場合
伊豆急下田駅から東海バス(堂ヶ島行or宇久須行)に乗車、約50分で到着する「松崎」もしくは「松崎小学校」バス停で下車します。ここから雲見入谷行のバスに乗り換えて、約5分で「室岩洞」バス停に到着します。バス停から室岩洞までは徒歩3分ほどです。 - タクシーを利用する場合
時間を気にせず移動したい方や、乗り換えの手間を省きたい方は、駅からタクシーを利用する方法もあります。ただし、最寄り駅からでも車でおよそ40分と距離があるため、運賃が高額になってしまう点には注意が必要です。
駐車場情報
専用駐車場あり(4~5台/無料)
国道沿いの小さな駐車スペースです。駐車場から道路を渡った先に、洞窟の入口へと続く遊歩道があります。道路を横断する際は、車の往来に十分注意しましょう。
入場料
無料
※手続きなしで自由に見学できます。
見学時間・定休日
| 見学時間 | 8:30~17:00 |
| 定休日 | なし |
※洞内の照明は8:30~17:00のみ点灯します。点灯時間外は完全な暗闇となりますので、危険防止のため見学は禁止です。
※ご紹介した内容は記事執筆時点の情報です。お出かけの際は、必ず事前に公式サイト等で最新の情報をご確認ください。
おわりに
室岩洞は、地下迷宮のような広大な空間で探検気分を味わいながら、かつての職人たちが残した手掘りの採石跡や、歴史の深いロマンを楽しめるちょっとスリリングなスポットです。観光地化され過ぎていない隠れた名所が好きな方や、歴史の知恵に触れたい方はもちろん、日常を忘れて非現実的な迷宮探索気分を味わいたい方にもぴったりですよ。
この記事が、あなたの次の休日や旅行をより素敵なものにするきっかけになれば嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。どうぞ、心に残る素敵なお出かけを楽しんできてくださいね!




